1. 日本の出番が来た
トマ・ピケテイの「21世紀の資本主義」が世界中で話題になり、日本でも水野和夫の「資本主義の終焉」が注目され、又ドラッカーは20世紀のおわりに「ポスト資本主義」で企業を含む経済社会の21世紀の姿を描きました。
ドラッカーは社会生態学者として社会を「身体」とすれば、企業は地域社会や政治経済の機関として人類福祉に貢献する「器官」であると考える思想家でした。その思想は江戸時代初期に近江商法に影響を与えた三河武士出身の僧侶、鈴木正三の士農工商の仕事の哲学「四民日用」の思想と重なります。
「欧米流の株主資本主義に日本の経営者は洗脳されている」と指摘する米シリコンバレーで活躍するベンチャーキャピタリストの原丈人氏は米国流MBA教育批判者です。「MBAは会社を滅ぼす」で有名なカナダの経営学者ヘンリー・ミンツバーグはMBAのマネジメント教育は個人の高収入を上げるスキルアップを売り物にして高収入を上げている米国型MBA教育がアメリカ経済社会に悪影響を与えていると事例を上げて分析しました。
トヨタ式経営をもとにTOC(制約理論)を開発した故ゴールドラット博士は生産システムだけではなく、製品開発、システム開発、新事業開発などプロジェクトマネジメントを中心とした実践的なマネジメント哲学の思想を作りました。トヨタだけではなく日本のモノづくりの感性から生み出された手法はTQC,5S,田口メソッドが世界の製造業に大きな影響を与えています。欧米の先進的な企業やマネジメント研究者が日本研究から優れたマネジメント手法を開発していながら日本的ものづくり経営の本質を体系化し実践的な実学教育がなされているとは思えません。ここに戦後日本のモノづくりの知を発展させた「昭和時代」の日本人による日本の現場実践を基礎にする体系的なマネジメントの実践と人材教育を目指して、実績のあるシルバー世代の有志が立ち上がりました。
江戸時代からの農工商の思想や匠の技が欧米の科学やマネジメント思想を取り入れ明治・大正・昭和時代を経て世界最高レベルに達したことは紛れもない事実です。マネジメントは科学ではなく思想や手法と現場での実践が一体化(文武両道)することを目指します。
日米のMBA的な手法も取り入れ、東レのカーボンファイバーなど素材などミクロな技術開発の方法論や日本的な「和」の組織論に基づくシステム開発や事業開発プロジェクトマネジメントなど日本のモノづくりの知を基礎にしたモノだけではなくコトやシステムであるビジネスモデルづくりのマネジメントが今必要とされています。それはドラッカーやミンツバーグ、原丈人氏が唱える21世紀の共益資本主義社会が要求するものと確信します。欧米優位のマネジメント理論から日本発のマネジメント理論を体系化しやがて世界に発信できる「ものづくり21世紀塾」を開講したいとのビジョンを抱いています。
2.0組織
多摩大学大学院ビジネススクールの客員教授に就任する数年前に東京農工大学大学院MOTでサプライチェーンマネジメントを教えていた関係で当時の研究科長で現在職業能力開発総合大学校校長の古川勇二先生を中心としたMOT人脈を基盤とした6人の発起人からなる組織からスタートします。古川先生は現在重責ある立場で正式には未だ参加されていませんが今回のプロジェクトの発案者です。
東京農工大のMOT人脈の延長として講演会や交流会を継続しているMOTサロンや4年前からMOT終了生を中心に開講した今岡のドラッカーマネジメント塾を統合し新組織による事業立ち上げの話が持ち上がり、ここに「株式会社21世紀ものづくり日本」を立ち上げました。
3.コンセプト
製品開発、システム開発、事業開発など組織としてプロジェクトマネジメントで成果を上げて組織のイノベーションや起業に役立つ思想や手法を道具として東西古今から学ぶ場とします。
「自分の持っている道具がカナヅチしかないとすべての問題が「クギ」に見えてしまうものである」(アブラハムマズロー)をさけるために道具箱は多様に持ち、問題定義を重視する教育とします。
マネジメントを行うための思想や手法などの道具は大きく分類すると人間の本質は3つに分類できると考えます。ヘンリー・ミンツバーグは米国型MBA教育の問題をサイエンス重視の計算型重視、論理的思考に偏っていると批判し、人間はアート、サイエンス、クラフトの3つの側面がバランスしていなければマネジメントできないと述べています。又ピーター・F・ドラッカーのマネジメント思想を言葉で分類すると精神、戦略、実戦に分類することが出来て過去4年間その体系で今岡はドラッカー塾を開催して好評を得ました。マネジメントの本質はクラフト(身体)実戦を中核としてアート(心)精神とサイエンス(頭)戦略の分野の能力開発にあると考えます。
ヘンリー・ミンツバーグとドラッカーのマネジメントの要件を身体に器官のメタファーで構造化すると以下の通りになります。
実学教育で貢献された多摩大学大学院の前研究科長であった橋本先生にも是非ご協力頂きたいと期待しております。ELPASO会ともコラボさせて頂ければ嬉しく思います。