第22回ブログ(2017.11) 専務理事 橋本忠夫; ビジネスパーソンと「お人善し」

H29年度の新規奨学生(公1事業)と、優秀プロジェクト賞(公2事業)の選考が終了し受賞者授与式が行われた。その選考過程で少し気になったことについて書いてみたい。

「ビジネスはお人好しには難しい」というメッセージは正しいものとして、世間に浸透している。ここで「お人好し」を「善人」と解釈してしまうと、上記メッセージは「ビジネスは善人には難しい」となり、一方でビジネスを通じて悪事を働く事例は昔も今も後を絶たないため、ビジネス界は悪人だらけという結論になってしまう。ちなみに漢字では「お人好し」であって、「お人善し」とは書かない。ビジネスの中心は悪人ではなく「善人」であると主張するためには、「お人好し」なる人間がどういう人間なのかを解き明かす必要がある。

 

仮に次のような状況を想定してみる。

「ある人がパネルディスカッションで5人のパネラーのうちの1人を務めることになっていた。ところが、長い付き合いの親しい友人から電話があり、パネルディスカッションの当日、同時刻にどうしても会いたい、という。先約があるので別の日に、と言ったが、その友人はどうしても!、と懇願して譲らない。」

 

ノーマルなビジネスパーソン:同日・同時刻の理由を友人に再確認する。内容の深刻度合と自分の果たす役割がパネルディスカッション参加に比してはるかに重要であり、且つ日時設定の緊急性・合理性が十分あると判断すれば、事務局に事情を説明しパネラー交代等の対策検討を依頼する。友人の説明に納得できない場合は、当然、日時については明確に断る。

お人好しビジネスパーソン:これほど懇願するからには、かなり深刻な状況下にあることは疑いない。また、長い付き合いの彼のために一肌脱いでやりたい。パネルディスカッションの趣旨は、パネラーがたとえ4人になったとしても、それほど阻害されないだろう。キャンセルの連絡と、他パネラーへの交代等についての検討を事務局に依頼しよう。

 

ここで、この「お人好しビジネスパーソン」の心の動きを見ると、行動の優先基準が「自分の周囲の人間関係を損なわないこと」にあり、約束履行責任感は二の次になっている。「お人好し」は決して利己的な人間ではなく、思いやりがあり、他人に酷いことができない価値観の保持者である。しかし、約束不履行がもたらす相手側の不利益への配慮はみられない。また、彼が良いことと固く信じている「優しい人間関係」は自己中心の思いに基づくものであり、長期的視点からの人間関係や集団への影響にまで思いが及ばない。つまり「お人好し」とは【短期的に(一手先だけ読んで)想定される人間関係の軋轢逃避を第一優先基準として行動する善良な人間】と定義できるのではないだろうか。

「お人好し」は、ビジネス/経営/私的活動等のどのような問題に対しても、自己中心の善意基準で行動するため、仕事では、肝心なときに信頼できない人間でもある。「お人好し」がビジネスに向かないのは当然であり、トップマネジメントの仲間入りも拒否すべきである。

一方、「善人」=「お人好し」ではない。真・善・美は人生の究極の目的でもあり、善の実践には志だけでなく、知性と哲学が求められる。丸和育志会に集う人々が、柔軟で多面的な思考力・仲間を作る力・実践力の向上に努め、「お人好し」ではなく、『お人善し』になることを期待したい

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