第6回ブログ(2015.9.)理事 多摩大学名誉教授 日本ベンチャー学会理事;柳孝一

○ 私の経歴

 私は野村総合研究所が社内ベンチャーであった時、入社した創業時のメンバーです。
多摩大学が野田先生、中村先生が中心として設立された時も創業メンバーでした。
早稲田大学のビジネススクールが創設された時も創設メンバーであり、一貫してベンチャー企業や起業家の研究・支援を行って来ました。このような経歴から多摩大学やエルパソ会の今後の方向について私の私見を述べさせていただきます。

○ 多摩大学の目指したもの

多摩大学の開学の時のコンセプトは「21世紀を拓く大学」でした。わかりやすく言えば「今までの大学ができなかったことをすべてやるベンチャー大学」を創業したと思います。後発で小規模な無名大学であった多摩大学は、実務界出身の教員が約3分の2で、実践的教育に力を入れました。一方で学業の効果が上がらない学生に「退学勧告」をするなどで世間の注目を浴び、応募する学生数が増え、新設大学としては非常に高い倍率となりました。
100年以上の歴史のある大学が数多く、しかも大学というアカデミズムの権威が支配する中で、それまでの常識や慣習を打破することで、多摩大学はベンチャー大学としての存在感を増しました。まさに、旧い歴史を持つ経済界の中で誕生するベンチャー企業が、イノベーションや新アイデアによって生き抜いていくことと同じです。しかし、大学も企業も年がたつとともに新しさを失い、普通の大学や企業になってしまう傾向が常にあります。特に大学は、学問体系という柱があるため、権威によりかかりがちになります。常に自らを変革しつづけるという努力をする必要があると思います。
このような多摩大学と永らく学生の奨学金支給を行って来た財団法人との出会いがあり、新たに発足した公益財団法人の組織内機関としてエルパソ会が発足しました。

○ エルパソ会の目指すべきもの

私はエルパソ会のフェロー会員、理事として参加させていただいたので、エルパソ会に対する私の希望を述べたいと思います。私の経歴の中に書きましたように、一貫してベンチャー企業や起業家の研究・支援を行って来たので、エルパソ会でもこの経験を活かしたいと思います。
日本ベンチャー学会の創設は、1997年11月で、私も創設メンバーの一人でしたが、まだ17年前のことです。ですから、日本で本格的にベンチャー企業、アントレプレナー(起業家)等々の言葉が使われるようになったのは、つい最近のことです。
日本では、失われた20年を経ても、将来の日本経済のあり方が明確ではありません。現存の大企業に依存していても、新しいイノベーションを起こし、新産業を生み出すことは困難です。一方、米国や中国、インドなどでは新しいベンチャー企業が産業の中心となりつつありますし、続々と生まれて来ています。今こそ、アントレプレナー(起業家)を勇気づけ、支援し育成していくことは、次の世代を考えた時、絶対に必要なことです。エルパソ会では、事業化計画立案申請書の募集を行い、作成の支援を行った上で、審査し選定された計画に対し支援金を提供しています。昨年も5件の計画について支援し、9月中に支援後の進行状況についての報告会があります。このようにエルパソ会は積極的にベンチャー企業やアントレプレナー(起業家)の支援活動を行って行きますので、多くの皆様のご参加やご協力をお願いいたします。

○ 最近のベンチャー企業、アントレプレナーの動向について
最近いくつかの動向があり注目されます。

1.ソーシャル・アントレプレナーの増大

 今までのアントレプレナーは、米国におけるグーグルやフェイスブックに代表されるような、イノベーションや新アイデアで世界的大企業になることが中心でした。しかし、リーマンショック以降、米国のトップMBAの学生の中で社会問題を解決しようとする、ソーシャル・アントレプレナーが注目されています。
日本でも3.11大震災・原発事故の後、東北地方を中心にソーシャル・アントレプレナーが多数活躍しています。この動きは全国に波及しつつあり、全国規模で毎年優秀ベンチャーを表彰するJVA(JAPAN VENTURE AWARDS)では、今年は(株)トライフ(障がい者用、高齢者用の歯みがきジェル)、昨年は(株)TESS(障がい者向けの足こぎ車椅子)が、経済産業大臣賞を受賞し表彰されました。最近有名になった(株)ユーグレナも3 年前の表彰企業で、もともと東大発ベンチャーで、出発点はバングラディシュの子供達への食糧支援でした。JVAでは特にソーシャル・アントレプレナーを優遇しているわけではなく、時代の流れで若い人達の関心が、社会的問題に向いているためと思っています。このようなことから、非営利型ベンチャーであるNPOも急増しており、株式会社形態である営利型ベンチャーと相互に重なり合うケースが多くみられ、ベンチャー全体の発展に寄与すると思っています。

2.ベンチャー企業の活動分野の拡大

ソーシャル・アントレプレナーの増大と一部重なりますが、ベンチャー企業の活動分野が非常に広範囲に拡大しています。先に述べた福祉、医療、介護といった分野だけでなく、教育、エンターテイメントから、農林、水産業、物流、NET販売、等々ほとんどの分野への拡大が見られます。これは、旧来から存在する産業と新しいITシステムが結合してベンチャーが生まれているからです。例えば、ハウス栽培にIT による完全コントロール技術が結びついて、植物工場のベンチャーが生まれるということです。このように、ベンチャー企業の歴史はまだ短いですが、今後日本の産業の中心を支えることとなると思われます。
歴史をふり返ると、現在の大企業のルーツは、ベンチャー企業か企業内の社内ベンチャーから発足しています。このことからも、いつも世の中には、ベンチャーが生まれ産業を進化させているのです。エルパソ会は、ベンチャー企業やアントレプレナー(起業家)を支援する重要な役割を担うことを目指すべきと考えています。

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