コラム

【ELPASO会員コラム39-1】校長室から思いを馳せる①

2025年5月23日

事務局

2025.5.23
東京都立西高等学校長 土方 賢作

この度ご縁がありまして丸和育志会のコラムを執筆することになりました、東京都立西高等学校長の土方賢作と申します。どうぞよろしくお願い致します。

西高校は杉並区宮前に校舎があり、東京府立第十中学校を前身とする都立高校で、今年で創立88周年を迎える学校です。
「文武二道」「自主自律」を教育理念とし、「自由」な校風のもと、生徒たちは伸び伸びと高校生活を送っています。
私は西高校に着任して2年目となります。
校長は授業を担当していないので、生徒と直接話をする機会があまりありません。
しかし、西高校の歴代校長は生徒と親しく接する機会を大切にしていることを知り、私も着任以来このことを大切にして日々の業務を行っています。
校長にとって、始業式や終業式における講話は、生徒に直接話ができる良い機会です。
4月の1学期始業式で話した内容の一部をご紹介します。

~さて、今日は、最近の私のスマホ情報からお話しします。
私のネットサーフィンは、帰宅時の電車内のみと自己規制をかけ、情報閲覧をしています。
グーグルのネットニュース・検索を見ているのですが、私の画面に現れる最近の情報は、新幹線EX旅パック(先週新幹線で大阪に出張に行ったので)、いろいろな都立高校のホームページ情報、「都民に聞いた」優秀な生徒が多いと思う都立学校ランキングTOP20のたぐい(西高のランキングを気にしている訳ではありませんよ!)、吹奏楽やクラシックの音楽情報、大河ドラマ「べらぼう」関連、そして「スキップとローファー」(※高松美咲さんの漫画作品、「つばめ西高校」が舞台になっており、西高校が取材協力をした、西高生は誰もが知っている作品)情報などです。
私の好みが分かってしまいましたね!
このような現象を何と言うか、知っていますね?
そう、「フィルターバブル」のことですね。

総務省のホームページに掲載されている「進化するデジタル経済とその先にあるSociety5.0」という特集記事の中の「フィルターバブル」の説明部分を紹介します。

「フィルターバブルとは、アルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を指す。」

デジタルの進化やAIの力に驚嘆すると同時に、あらためて恐怖を感じています。
ネットによる情報のみに接する環境に身を置くと、自分の思考と同じ傾向の情報に囲まれ、自分とは異なる意見や情報が見えなくなってしまう状態になり、ひいては自然と異なる価値観を受け入れられなくなり、末は社会の分断を生み出すことになる…恐ろしいことです。

令和7年度の始まりにあたり、あらためて皆さんには、多様な価値観・情報に触れ、自分の頭と心で考え・感じることを大切にして欲しいと思います。
西高にはそういう機会がたくさんあります。
授業、クラスの活動、部活動、行事、土曜特別講座や訪問講義など、学校生活のあらゆる場面で「考える」機会があり、多様な価値観に触れる機会にあふれた学校です。
限られた情報に凝り固まるのではなく、自分から積極的に自分の考えとは異なる世界に飛び込んでください。
皆さんの西春(せいしゅん)に輝きを与えるはずです。
明日から新入生(第80期生)を迎えます。先輩西高生である皆さんのこれからの活躍に大いに期待しています。~

また、講話の際にはなるべく本を紹介するよう努めています。このことについては、次の機会に述べたいと思います。



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