コラム
【ELPASO会員コラム38-1】「いいものを安く」は国を亡ぼす
2025年2月21日
事務局
2025.2.21
公認会計士 野村 滋
アメリカではインフレーションが蔓延し、貧富の差が拡大し、トランプ2.0ではどのような政策が実施されるか世界は戦々恐々としています。
過去30年の物価はアメリカではほぼ2倍に上昇したのに対して、日本はほとんど横ばい。
また、賃金は過去25年間でアメリカは34%上昇したのに対して日本はマイナス2%という統計もあります。
世界のGDPに対する日本の貢献割合は1980年の9.8%から2020年は5.3%と低下し、一人当たりGDP は世界39位となりました。
このようになった原因はいくつもありますが、その一つが「いいものを安く」という日本人のメンタリティーにあると思います。
消費者にとっては大変喜ばしいことが、経済の発展を阻害しているのです。
経営者は常に拡大志向で売り上げの増進を図っています。
そのために、競業他社との差別化を行うために一番簡単な方策として「いいものを安く」という戦略をとることがしばしば見受けられます。
適正な利益の確保を犠牲にして、コストの上昇を自社で吸収して、薄利多売によってマーケットシェアを上昇させる。
ここで原価圧縮の一番簡単なことが安い労働力の確保、すなわち賃金の抑制です。
従業員も雇用の確保を維持するために賃金上昇をあきらめ、節約を徹底し支出を切り詰めた生活を強いられることになります。
このような状況は経済の縮小再生産への道を進むことになります。
日本はまさに「失われた30年」では賃金の上昇もなく、負のスパイラルに陥りました。
このような社会では国民の意欲の低下、経済的な余裕がないために婚姻率の低下、少子化による人口減少等々の問題が顕在化し、国の存亡の危機につながっていきます。
企業人は、適正な利潤を確保するため自信をもって適正な価格での販売を目指すべきです。「いいものを安く」から「いいものは高い」へ、思考の転換を行い、従業員への正当な報酬を支払い、ステークスホルダーへの適切な利潤の配分をめざすことが求められます。