【ELPASO会員コラム33-3】大谷翔平選手の「マンダラチャート」が生み出したもの

2024.1.26
ELPASO会員 本島明信

いまから100年余り前の1918年。世界が第一次世界大戦の真っただ中にあったとき、米国ではいまはMLBの伝説の人になっているベーブ・ルースが、「2ケタ本塁打(11本)&2ケタ勝利(13勝7敗/防御率2.21)」という大偉業を達成しました。

当時、米国も大戦に参戦している国の一つでしたので、おそらくこのニュースは暗闇の中の一本の蝋燭のように、人々の心に優しい温もりを提供したに違いなく、だからこそベーブ・ルースの名は、歴史上に100年を越えても全く色あせることなく、語り継がれてきたのだと思います。

それを2022年8月9日に、何と若い大谷翔平選手が同じMLBの舞台で、実に104年振りに「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」を達成したのですから(=言い方を変えれば、その間誰もできなかったことを実現したのですから)、米国のみならず世界中の野球ファンが驚愕したのも無理はありません。

現役の選手ながら、既に栄えある「伝説の人」の称号を得たも同然なのです。
ですからエンゼルスでプレーするようになって6年が過ぎ、FAによってドジャースに移籍が決まったときの契約金額が、10年7億ドルという途方もない金額で決まった際、初めは「エッ、何その金額?」と思った人でも程なく納得できたのではないでしょうか。

ただ、日本だけでなく、世界中の野球ファンの眼がその金額の多寡にだけ集まってしまうのは、如何なものかというのが当方の率直な意見です。
 
と申しますのは、世界中がコロナの感染拡大やロシアとウクライナの戦争等など暗い話に覆われているさ中、彼のMLBにおける活躍は、(多分ベーブ・ルースと同じように)人々の心を目一杯明るくしてくれた――この一点だけ取りましても、経済効果は計り測り知れないものがあるからなのです。
 
かつて米国の著名な経済学者ガルブレイス(1908-2006)は、著書「ゆたかな社会」の中で、ものを供給する側の(売るための)行動が消費者の行動パターンに影響を与えると説き、広告宣伝によって消費者の需要を惹起しうる状況を「依存効果」と呼んだのですが、大谷選手はその面でもCMに出る品物は爆発的に売れるという、新たな、そして大きな需要を生み出しているのです。
 
一般に景気を良くするのは、消費が進捗するか、投資、輸出が伸びるかがキーポイントなのですが、一野球ファンにとってはそういうマクロの話に関係なく、MLBのテレビ中継を通じて「今日はオオタニ君が目の覚めるようなホームランを打ってくれた」、「相手チームの選手をバッタバッタと三振させ、チームを勝利に導いた」…といった生の喜びが、私たちの気持ちを明るくさせるという点では、これもガルブレイスの提起した「依存効果」と言えるのではないでしょうか。正に消費者の財布のヒモを緩める効果なのです。
 
いつもなら夕食のおかずが二品であるのに、今日はオオタニ君がホームランを打ってくれて気分がスカッとしたから、ダンナさんの晩酌のつまみにして上げようと、日本国中の奥さんがその日きゅうりとワカメを酢のもの用に買えば、その消費金額の総トータルはけしてハンパではないはずです。
 
ガルブレイスの著書「ゆたかな社会」が世に出たのは1958年で、いまから66年も前にこういう消費者の行動パターンの特性を指摘した彼の慧眼には、ただただ畏れ入るばかりですが、もし彼がいま生きていて、大谷翔平選手の活躍とその二次的波及効果を目の当たりにしたとしたら、きっと自分の眼に狂いはなかったと確信するのではないでしょうか
 
インターネットで検索してみましたら、ある日本の経済学者が、大谷選手の経済効果について2023年シーズンは504億円に上ったと推計している――これには、試合観戦にわざわざ米国まで行った日本人の旅費12億円も含まれている――ようですが、上述のようなホームランや投げて掴んだ勝利による「スカッとした気分に基づく消費支出」額を加えれば、数字はもっともっと膨れ上がるはずで、これがたった一人の29歳の日本の若者に纏わることなのですからそんなことが本当にできるのかと思わず目を擦りたくなるほどの驚きです。
 
さて、ここからがこのコラムで申し上げたいことなのですが、そして明るい未来が待っている丸和育志会の方々に是非見習ってほしいと思う点なのですが、それは大谷選手がまだ高校1年生のとき、当時所属していた花巻東高校の野球部の監督から教わったという「マンダラチャート」の効果威力の凄さです。

縦横それぞれ9マスずつ、すなわち合計81のマス目の中心に、自分が達成したい一番の目標を据え、そのマスを囲む合計8つのマスには、その目標を達成するには何が必要であるかをしたため、さらにその外側に位置するそれぞれ9つのマスには、今度はその必要項目を確実に全うするために求められる必達事項、あるいは頭に叩き込むべきことが書かれてロードマップとなる手法なのです。

良い機会ですので、彼が2010年、17歳のときに描いた「マンダラチャート」をインターネットから拾い出し、ここに転記させていただくことにします;
20240116本島明信さん会員コラム33-3挿入図1.png
ちなみに上記の8つの目標のうち、一つだけ「運」を例にとってみますと、
20240116本島明信さん会員コラム33-3挿入図2.png
 
如何でしょう、これが17歳の若者の作ったものと思えるでしょうか。
エンゼルス時代にテレビ中継で観た彼のマナーの良さが、なるほどここに原点があったのかと納得できます。

高校時代の彼にこの「マンダラチャート(別称:目標達成シート)」を教えた花巻東高校の佐々木洋監督、それと高校を卒業するとき米国に渡って野球をやるという強い願望を翻させ、日本で(いろいろ外野からは批判を受けながらも)二刀流の可能性を追い求めさせた当時の日本ハムファイターズ球団の栗山英樹監督という、二人の名伯楽に出会えたことの僥倖を感じないわけにはいかないのではないでしょうか。ちなみに、この「マンダラチャート」はインターネットでいまも彼の自筆のもののコピー(別添)を直に観ることができますので、是非吟味してみて下さい。本当に畏れ入るばかりです。
 
一言で表現すれば、この「マンダラチャート」はそれを作成した人にやる気さえあれば、その本人に一切スキも気の緩みも与えることなく、目標に向かって全力疾走させる、まるで魔法の杖のようなものと言って差し支えないでしょう。
 
大谷翔平選手の今日ある背景には、明らかにこの「マンダラチャート」の恩恵が感じられるため、皆さまに強く推奨させていただきます。彼は別格中の別格などと思わず、ご自分の目標達成のためお試しいただきたく、是非にとお願いいたします。 (了)