【会員コラム26-2(理事長-2)】「ソーシャルビジネスと悪人」

コラム2  ソーシャルビジネスと悪人  [自分で考え 仲間をつくり 実践する ]

2020年から2年間、人類は新型コロナに振り回されたが、2022年は新たにウクライナ戦争に悩まされることになった。
自ら同胞と規定した隣国の住宅、病院、学校にミサイルを無差別に撃ち込み、無防備な国民の生命を奪い財産を瓦礫にして平気とは、人間の所業とは思えない。
しかし、独裁権力者といえどもこれだけ大きい悲惨な結果を、たった一人で実現することはできず、そこには必ず一定人数の主体的推進組織が存在する。

いつの時代も、悪事毎に作り出された組織が直接・間接に善良な市民(善人)を苦しめてきた。
今後も世界中で繰り返し発生することが予想され、根絶されるとは思えない。
その上、悪事の規模が大きくなるにつれ、悪事組織参画者数も当然、増加するに違いない。

1831年フランス人トクヴィルは、9ヵ月間に亘りアメリカ各地に滞在・調査した。
その結果、ワシントンの中央政府の統治が及ばない西部開拓コミュニティでは、発生する様々な問題を住民自身が結社し解決してゆくアメリカ人の行動力に感心し、結社はデモクラシーの大きな要素の一つと位置付けた。
結社の自由は、権利と共に義務的要素をも持つ規範として、アメリカ社会に定着していったといえる。
『結社は民主主義の必須要件』であり、特に現代のような超複雑化世界では、発生した問題を現場で直接対峙する当事者自身が仲間をつくり(結社し)、主体的に問題解決行動を起こすことが求められる。

日本国憲法21条には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」とあるが、条文表現からも分かる通り、日本国憲法には、結社の自由とは表現の自由の一要素に過ぎず、民主主義の必須要件という強い思いは見られない。
日本では、家族・親類・隣近所の人間関係等、自分達の問題は自分達で解決すべきと考えてはいても、それを超えた社会的な問題はすべて【お上の仕事】と思い込み、思い込まされてきた。
アメリカ西部劇のように、住民が結託してシェリフを雇いギャングを追い出すといったシナリオは、発想すら難しい。
立派な偉い人が出てきて社会的問題を解決し、正義も回復してくれることをひたすら願い、待ち望んでいるのが我々日本国民である。
社会課題解決の一端は、自分も担わなければならないなどとは思いもよらない、が圧倒的多数派だと言っても過言ではない。

その観点から現実を見直すと、お上の指示なしに対等の立場で自主的に結社を実践しているのは実は悪人だ、ともいえる。
利己的な金銭欲や権力欲だけが目的の悪人が、手段だけとはいえ民主的結社行動を実践しているのに、昔も今も善人の結社力・行動力がなぜ弱いのか考えさせられる(みんなのためという大義名分があるにもかかわらず!)。
これを打破することができれば、ソーシャルビジネスの輪は大きく広がるのではないだろうか。

ソーシャルビジネス起業家を目指すELPASO会員の皆さま方は、上記解釈についてどう思われますか、疑問・質問を含め、自由で、忌憚のないご意見をお寄せください。
コラム-1では6人の方から返信を頂きました)          

2022.3.25.
理事長 橋本忠夫