【会員コラム26-1(理事長-1)】「五輪メダル数と多様性社会」

コラム1  オリンピック メダル数と多様性社会  [自分で考え 仲間をつくり 実践する ]

2022冬季オリンピック(以下五輪)が終了した。印象に残る話題はいろいろあるが、ここでは国別獲得メダル数ランキングについて考えてみたい。

国別メダル数ランキングの中では、金メダル数(②)だけに注目したランキングをIOCが発表しており、主催国中国は「世界第3位」報道を国内向けに強く発信している。
日本のメディアが国内向けに発信した共通メッセージは、「冬季五輪史上最多メダル数18個」(世界6位)で、総メダル数(①)を最重要基準としている。
また金・銀・銅のそれぞれに、3点、2点、1点の重みを付けた集計値(③)ランキング案にも一理があるので、それに従い15位までの資料をまとめると次の3表となる。

3表の内どのランキングが正しいかという問いに対する正解はない。①②③の価値観が違い、その違いを克服するロジックはないからである。そのため、日本は①、中国は②を選択し、自国に都合の良い報道をしているわけである。

『多様性社会』とは、価値観の違いを受け入れ、それぞれの価値観に基づく個人や集団の主張に賛成/反対する人々が共存する社会であり、21世紀世界のキーワードの一つである。
その多様性社会では、多様な意見に向き合う心構えが必要であるが、それをどんな意見(たとえパワハラ擁護派の主義・主張)であってもそのまま受け入れなければならないと『多様性社会』を誤って認識すると、正当な意見が発信できず社会は停滞する。
 
「白熱教室 世界の人たちと正義の話をしよう」で有名なハーバード大マイケルサンデル教授が主張する「物事の多面的見方の重要性」は言うまでもない。
ただ人間社会は元々様々な解釈が可能な側面を持つため、多面的な見方、議論に圧倒されて自らの知力の限界を痛感し過ぎると、不安になり自信を失って行動エネルギーが低下する。
 
「何も考えず一手先だけを読んで行動する無謀」は論外としても、期限を定めて考え抜いた後では断固として行動し、その行動によって初めて見えるものを見ようとする勇気が、いつの時代にも起業家には求められる。
 
主権を持つ隣国を武力で公然と制圧する大国が21世紀に出現した。多様性社会は、そのような権威主義国家とは無縁である。
起業家を最後に支えてくれるのは、各人が築き上げてきた豊かな人脈=仲間であること、そして、特定のソーシャルビジネスのWin-Win関係を構築する自律的集団としてELPASO会が成長してゆくことを目指したい。 
理事長 橋本忠夫