第17回ブログ(2016.10)株式会社Pont D’or 代表取締役 青山美恵子;「マイターニングポイント」

2015年12月公益財団法人丸和育志会にて自身のビジネスプランにおいて優秀賞をいただいた。
このビジネスプランは、構想や計画には数年以上の時間を要し、かなりぼんやりしたイメージからのスタートであった。
「なぜ起業しようと思ったのですか?」という質問は幾度となくされてきた。
正直なところ、勢いということも大きい。
一方で自分自身の人生計画通りとも言える。
学生時代に、1年間語学留学に行っていたことがある。
ブライトンというイギリス南部のビーチリゾート的な小さな都市で、ロンドンから電車で1時間弱のこじんまりとした街。
それまで数ヶ月単位で外国に住むことはあっても、長期滞在の経験はなく、このブライトンでの留学が初の長期滞在であった。
留学前に「イギリスはごはんが美味しくない国」という説明を誰かしらからかされたものの、何のステレオタイプも持ち合わせず入国した。
1つ懸念があったとすれば、留学直前にテロが起き、ロンドン市街のキングスクロス駅で爆破事故が発生していたことであった。
このブライトンという街に、世界でも有名な国際開発学が学べるサセックス大学が所在していることも留学してしばらくしてから知ることになる。
留学生活はとにかく新鮮という言葉に尽きる。
どこかしこで聞こえてくる心地よいイギリス英語、街並み、空気、匂い、人、食べもの、乗りもの、家族感、社会性など全てが目新しく日本と異なる感覚を覚えた。
そして何より自分自身の中での大きな衝撃は、「自分は世界のことを何も知らないで生きてきたのだ」という自覚であった。
留学前にイギリスの歴史をまともに学んできたわけでもなく、世界の歴史がさほど好きでもなかったので、良くも悪くも何のイメージもステレオタイプも持ち合わせていなかった。
ただその自覚が大きくなればなるほど、もっと世界のことを知りたいという欲求へと変化し留学中に大学院への進学を決意した。
サセックス大学への進学も少し考えたが、当時のイギリスの物価を考えるとこれから4年近く留学を続けることは難しかったこと、開発学に対してゼロベースの状態にもかかわらず外国語で講義を受講することにより理解度が低くなってしまう懸念などを考慮し、日本へ戻ってからの進学にした。
進学先の専攻は「国際協力」「国際開発」という分野。
世界で起きてきた開発を含む歴史を鑑み、現状とどう向き合い、どう改善へ向けて働きかけ、どう行動を起こしていくのかというとてつもなく大きな課題を研究材料にし過ごした数年間。
NGOを立ち上げたり、NPOの役員になったり、NPO職員として途上国に赴任したり、日本の施設でボランティアしたりとやれることはトライした数年間。
どんなことでもまず現状を多角的に知り、分析し、解決の糸口を探る繰り返し。
そこで、1つ大きな課題にぶつかる。
それは活動におけるプロジェクトのキャッシュフローである。
NGOやNPOの非営利団体での活動資金調達は寄付金、補助金、助成金など第三者機関より流動される資金を基にしている。
端的にいえば、その資金が全てであり、ショートしたらたとえプロジェクトが途中段階であったとしてもストップせざるを得ない。
建設途中のものもあれば、作成途中のものがたくさん埋まっている状態を肌で感じてきたし、循環型にできないキャッシュフローはいつか破綻を招くことも経験した。
そしてもう1つ。「援助」という形は開発において不可欠な考え方である一方で、二極分化を招くことになるということ。
「援助される側のエンパワーメントなくして、開発は成立しない」というのが自身の信条である。
これら2つを成立させるために考えついたことが「ビジネス」であった。
『「循環型のキャッシュフローを可能にし、途上国側にもメリットがある事業」を興し継続させる』
これが自分自身の起業の最も根幹的な目的である。
それから目的達成のためのビジネスプランを考える期間に突入していくことになり、暗中模索の日々が始まる。
アイデアを考えては消しを繰り返し、結果的に「クッキングサロン事業」にいたった。
「文化」というソフトパワーの中でも「食」「美容」「健康」を切り口に、一人でも多くの人が関心を持てるような身近なテーマを題材にすることにした。
2015年4月に創業し、1年半が経過した。
想定内でもあり想定外でもある経営という事業運営は、日々変化し、思った通りには全くいかないまるで子育てのようなものなのかもしれない。
新しい出会いや発見や進歩が目に見えてくるとこれまでの労苦が吹き飛ぶような気持ちにさせられる。
会社が育ち続けていけるように、自分自身の成長と歩みを絶やすことなく日々の現実と向き合っていきたい。
そして人生を変えるきっかけになった留学経験、イギリスという国にとても感謝している。
近々、お世話になったホストファミリーに会いにいきたい。