コラム

【ELPASO会員コラム41-2】志と言葉

2025年12月19日

事務局

2025.12.19
CRAFT54 宇井加美

志の変化にきっかけの言葉があった。
前回、絵筆を続けた「志」が今につながってきたと思いださせていただき、社会人になってから「志」については時代の影響とともに変化があり次のステップに先輩たちの言葉がよい方向へと導いてくれたと気づいた。

子供の頃は、家は大工さんが木材を現地加工し、残材がたくさん出ていて近所の子供たちに敷居の切れはしなどで船や、飛行機を削り出してくれた、職人が作ってくれた木のおもちゃに夢中になり、木がこんなに加工できると身近に体験できた。
プラモデルがない時代に夢の玩具を手にした喜びは手の感触に残っている。
大工にあこがれをもち育ち、生まれ住んでいた貸家(屯田兵時代の木造)から、父が自宅を建てた。
設計士が図面を作る過程で模型を作ってみてはと、父と一緒に工作で模型をつくり検討した、片流れのトタン屋根のシンプルな外観、内装は北海道産の楡ベニヤを使うなど、家ができていく過程を一緒に経験してきた。将来は建築家にとあこがれていた時期。
浪人し大都会へのあこがれで東京の大学へ、卒業時にはオイルショックなどで産業界も自動車産業より建設産業が注目され、建築設計事務所など憧れの職業の時代、企業人の叔父に相談、機械科を出て建設業で建築設備がこれから伸びる業界だと、ゼネコンの設備部門へ入社した。
設備はまだまだ建築付帯設備、衛生屋などと呼ばれていたが、設備に力を入れていた準大手のフジタに入社した。
スーダラ節でサラリーマンが気楽な家業と歌われていた当時、藤田一暁社長から入社の言葉で、「月給を受け取るだけのサラリーマンではなく、ビジネスマンになれ!」と、ビジネスとは何か考えながら務めはじめた。
3年間くらいで設計・積算・現場管理・メンテナンス部門を経験する新人の人事教育で、建設全体が把握できる良いプログラムだったと思った。
設備技術者は若くプロジェクトでは、先輩たちと一緒に大企業や大手設計事務所との共同設計など他社ともまれながら、一緒に業務に当たれた経験が生かされている。

入社後に人事評価制度変更があり、将来管理職を目指すか、専門職を選ぶか、との時に私は迷わず技術専門職を選んだ。
結果社内の各種プロジェクトに参加できる機会が増え、建築の施主となる事業主と直接打合せる機会に恵まれた。
また当時、建築設備は建築の中でも、育ち盛りの分野でメーカーと一緒に開発するなど他業種とも一緒に活動できた時代であった。
省エネルギー、システムのコンパクト化、建築と一体になった環境建築、施工の効率化、ユニット化など物件ごとにレンジできるチャンスが多かった。
当然時間外にも働きそのあと、仲間と居酒屋で愚痴や上司への不満や憂さを酒にぶつけて飲みほうけていた。
設備は稼働して1、2年経って結果がわかることが多い、うまくいかずお詫びに行くことも、今思うと経験したからこそ身についたことで、建てた後も適切な管理している施設をみて、造る人使う人の両面からのものの考え方が身についた。

ららぽーと船橋ショッピングセンターの企画から設計・現場管理その後ホテルや2期工事まで設備技術者として携わった。
三井不動産の若い方たちから、三井不動産社長の入社時の言葉「君たちは技術者を気持ちよく働いてもらう立場だから、技術屋から本心を聞き取れる力を持ちなさい」と言われていると聞かされ、幅広く設備計画論を協議させていただいたき、本当に力を出せる良い環境を経験した。
設備から環境エンジニアリング部門に移動した後半54歳ころ、白井晟一が設計した庫裡のある、鎌倉浄智寺の朝比奈宗泉住職にお会いし、今の仕事に業界や企業での個人の限界を感じやめようか悩んでいる時、お話を伺ったところ、「悩んでいるなら、すぐに辞めてしまえ!」との言葉。
坊さんとはいえ無責任なと、顔を見ていたとき、自らも寺の息子だったが、仏門を避けテレビ業界へ入社して兼高かおる世界の旅のプロデュースをしていて、独立を考えたのが君と同じ歳、そこで一度人生を考え直して禅の門をたたき今に至っている、企業人を辞めた後の時間のほうが長い。
悩んでいるときはいったん考える時のために辞めて次の時間を長くした方がこれからのためには良い!と説法され、哲学や禅宗がより身近に感じ決心して独立のきっかけの一つとなった。
喜寿になり、札幌の柏中学・南高校の同窓会に参加、木造からコンクリートに変わった山鼻小学校にも訪問、2階に当時からの歴史的懐かしい物たちの展示教室があり、剥製の馬そり、ストーブ、足踏みオルガンや歴代の先生年表などが写真、校舎模型と共に展示されていた。
今年で創立142年卒業して約半分の時が流れている感慨と、北海道開拓はクラーク博士の「青年よ、大志を抱け」が思い浮かぶ、この言葉はその後研究者などから本心は「この老人のごとく野心をもて」との解釈もあることをこの年になり思い出した。
これは、先月11/24の丸和育志会50周年記念大会での橋本理事長の「活動総括と未来への想い」における「青年よ、大志を実現しよう!」及び『青年とは青年の心を持つ老若男女』という説明とあまりにも似ているため、付記しておきます。



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