2024.9.27
株式会社エイビット 代表取締役社長
檜山竹生
前回は、ビジネスのタイミングについて述べました。
私が所属する情報産業に偏りがあるかもしれませんが、ビジネスをデザインする際、タイミングと同様に重要なのが「ビジネスモデル」です。
かつて、資源が乏しく市場が脆弱だった日本のビジネスモデルは、材料を輸入し、それに付加価値を加えて世界に売るというもので、「作る」と「売る」が中心でした。
しかし、近年の成長産業では、インターネットやスマートデバイスを活用した「繋ぐビジネス」が主流となっています。
スタートアップや新たなビジネスを模索する起業家にとって、前回述べたダグラス・アダムスの法則に則れば、35歳までにインターネットの世界に刺激を受けて人々が起業した人々は大成功しました。
現在では、すでに構築されたネットワークやデバイスを巧みに利用し、即効性のあるビジネスを立ち上げることで、経済的な合理性が生まれます。
これに投資することで早期の利益回収を目指す投資家が増えており、これがスタートアップ・ファンダメンタルズを支えています。
ただし、即時性のあるビジネスは、競合もすぐに現れ、一夜にして挫折することも少なくありません。さらに、収益モデルが持続可能かどうかも重要です。
繋ぐビジネスでは、BtoBやBtoCが主なモデルとなり、特にBtoCにおいては広告収入が重要な収益源です。
例えば、GoogleはGmailという無料メールサービスで世界中のユーザーを獲得し、その後、検索広告収入を増やしました。さらに、Google Suiteなどの有料サービスで安定した収益を得ています。
また、CtoCビジネスでは、ユーザー同士を結びつけるサービスが多く、FacebookやX(旧Twitter)などが広告収入モデルの成功例です。
さらに、YouTubeやTikTokのような動画共有サイトでは、広告収入を投稿者に還元することで、Win-Winの関係を築いた新たなモデルも登場しています。
これらのビジネスモデルは、いずれも大規模な資本投下によって、無償でユーザーを呼び込み、その相乗効果で収益モデルを構築しています。
一定のスケールに達したビジネスは、ユーザーの離脱率(チャーン率)が目立たなくなり、競合も出にくくなります。
投資家やマーケットからは、この安定期から衰退期に向かう段階に嫌気がさし始め、企業価値向上が課題となるでしょう。
最近では、CtoCモデルをさらに発展させ、ユーザー同士の余剰と需要を繋ぐシェアリングビジネスが活発化しています。例えば、駐車場スペースや個人の時間、持ち物などを繋ぐビジネスです。
さて、これらの情報系ビジネスモデルは、進化した米国のAmazonやMicrosoftのクラウドサービス上で開発されており、その利用料金はコストとして支払われています。
つまり、クラウドサービスという基礎的なリソースを購入し、それに付加価値をつける点では、従来のビジネス原理と変わりはありません。
ただし、日本で稼いだ利益の大半が米国に流れている現状は、海外から材料を仕入れて販売するという日本の伝統的なビジネスモデルと同じですが、多くは外貨を稼ぐビジネスではなく、内向きのものです。
本来なら、クラウドサービスのような基礎を作るビジネスこそ日本が得意とする分野であるはずですが、現状では質の高いサービスを提供する企業はほとんど存在しません。
スタートアップビジネスとしては、既存の基盤を活用し、独自の問題解決型サービスを迅速に展開すれば、大きな成功を収める可能性があります。
そして、その成功にとどまらず、常にサービスの向上に努めれば、大きな収益につながるでしょう。
今後、日本の強みと弱みを理解し、リスクを恐れず世界を舞台に外貨を稼ぐ新たなビジネスを創出することを、多くの起業家に期待しています。