【ELPASO会員コラム36-1】ビジネスタイミング

2024.8.15
株式会社エイビット 代表取締役社長
檜山竹生

私は、17歳で学生創業をして気がつけば50年になろうとしています。
この間で大きな躍進をしてきたデジタルテクノロジーの分野に身を置けた事に感謝すると共に、これまでの流れを振り返りながら今後の業界の変化を予測してみたいと思います。
皆さんは英国のSF作家にして脚本家のダグラス・アダムスが提唱した「ダグラス・アダムスの法則」というのをご存知でしょうか。

1.生まれたときに世の中にあったものは、普通で当たり前で、世界を動かす自然の一部である
2.15歳から35歳の間に発明されたものは、刺激的で革命的と感じ、その分野でキャリアを積むこともできる
3.35歳を過ぎてから登場してきたものは、自然の秩序に反するものと感じる

1. Anything that is in the world when you’re born is normal and ordinary and is just a natural part of the way the world works.
2. Anything that’s invented between when you’re fifteen and thirty-five is new and exciting and revolutionary and you can probably get a career in it.
3. Anything invented after you’re thirty-five is against the natural order of things.

この法則を友人が私の属する業界の変遷をチャートにしてくれましたので、是非ご自身のジェネレーションを合わせてみてください。

チャートから、私は、創業した1970年代中頃から現在に至るまでの出来事を振り返り、「革命的」なゾーンをハッチングしてみました。
これは、変化の激しかったテクノロジー業界に焦点を当てたものですので、一般的なビジネスには必ずしも当てはまらないかもしれません。
しかし、私たちの生活に大きな影響を与えたイベントとして、参考にしていただければと思います。
特に赤字で示した部分は、私が15歳から35歳までの間に経験した出来事です。

第一法則では、物心がつき始めた頃にはすでにテレビがあり、人間が宇宙に進出し始めていました。
自由に移動ができ、平和でありながら、変化に富んだ夢のある時代でありました。
しかし、何かが足りないと感じ、自分達がそれを作って行かねばならないと言う活気が溢れていた時期でもありました。

第二法則では、今度は自分達が生活をさらに便利にするテクノロジーを作り出すという、とてもラッキーな時代だったと思っています。
マイコンが出現し、パソコンを作り、パソコン通信からインターネットで世界と繋がるようになって、「いつでもどこでも誰とでも」繋がる時代を作り上げたのが35歳くらいですので、その時代に主役として経営できたのはとても幸運でした。

第三法則では、その後の30年は作り上げた基盤の上にビジネスを続けてきましたが、自ら大革新させるようなテクノロジーを作っていないと感じています。
むしろ、過去の技術の磨き直しや組み合わることで課題の解決に繋げるソリューション・ビジネスを展開している印象が強く、周囲は法則どおりにインターネットを使ったサービスや今後大きな変化をもたらすであろうAIビジネスに新たな取り組みを開始しているというサイクルに入っていて、いるにもかかわらず乗り遅れを感じているのは法則の通りと言えるでしょう。

さて、表題のビジネスタイミングでありますが、経験から、ビジネステーマが早すぎると大きく成長しないことは痛いほど経験していますが、上手にタイミングを見極める経営者は少ないと感じます。
例えば、皆さんがご存知のAppleのスティーブ・ジョブズやFaceBookのマーク・ザッカーバークもプロダクトやサービスの先駆者ではありません。
彼らは先行者の仕組みを周到に学び、エッセンスを加えてタイミングよく市場に再登場させることで成功を収めました。
彼らは、タイミングを狙い、効率よく登場させてマーケットを席巻するという天才的プロデューサーなのです。
サービス分野では、より良い魅力的な機能やコストを提供し、マーケットに周知できれば極端な話、一夜にしてマーケットを自分のものにできて、決して遅きに失することはありません。
時代は、手のひらの上にはスマートフォンのような情報端末にAI機能がクラウドと共に強力に具備されているのがZ世代の当たり前になっています。
AI業界では一夜にして主役が交代するような状況が続いているのは、新たなビジネスチャンス到来とも言えるでしょう。
すべてが法則通りとは限りませんが、自分の経験や年齢に合わせた事業や仕事への取り組みが効果的と考えます。
若い人のスタートアップは、第二法則に従い、最近発明(トレンドとなっている)された技術や社会問題解決をベースにした事業を起こすべきです。
一方、シニア世代の第二創業は新しい技術に無理に挑戦するのではなく、既存の知識や経験を上手に使いこなして事業化するのが成功の鍵となるでしょう。

刻々と変わる世界経済や国際関係、そしてAIの活用による仕事の変化が見られる現代は、ビジネスチャンスの到来と言えるでしょう。
各世代が得意分野を活かし、志を持った経営や事業を進めていってほしいと思います。

(参考文献)
ダグラス・アダムスの法則をキミは知っているか? 遠藤論(角川アスキー総研 主席研究員)