「メディアをビジネス視点で検証すると・・・」 ②低視聴率なのにドラマ枠はなぜ増える?
近年、テレビのドラマ枠が急増しています。
この春からフジテレビは、水曜10時にドラマ枠を1つ増やしました。『ナンバMG5』というヤンキーのドラマです。
同時間帯は日本テレビが以前から、若い女性向けドラマを放送しているのを承知の上で、敢えてぶつけてきました。
TBSは火曜深夜に、「ドラマストリーム」という枠を増設しました。テレビ東京も火曜深夜に1つ増やしました。
実はこの5年で6枠増え、同局の深夜ドラマは8枠に増えています。
ただしドラマの視聴率は、決して順風満帆ではありません。
例えばフジテレビのドラマの年間平均世帯視聴率は、この20年で半減しました。
フジの代名詞だった月9は、恋愛ものなどトレンディドラマが一世を風靡しましたが、視聴率下落を受け2018年頃から路線を変更しています。
ただし中高年の視聴者が増えたことで数字を少し持ち直しましたが、全体としては依然として平均が二桁に届きません。
一方テレビ局は、番組制作費がドラマの半分ほどで済むバラエティ枠を増やしていました。仮に視聴率が8掛けでも、コストが半分なら利益は上を行きます。
30年前はバラエティの占める割合はGP帯(夜7~11時)の2割ほどでしたが、今や5割を超えています。
費用対効果を前提に、番組のバラエティ化が進んでいたのです。
では何故ここに来て、コスパが悪く見えるドラマ枠が増えているのでしょうか。
実はテレビ局のビジネスモデルが変化し始めています。テレビ広告費は2000年には2兆円を超えていました。
ところが20年で市場の15%が消えました。テレビのライブ視聴が減り、タイムシフト視聴やインターネットに国民の可処分時間が奪われたからです。
こうした事態を受けて、テレビ局は活路をインターネットに求め始めました。
そこで戦えるのが、タイムシフト視聴されにくいバラエティではなく、各話の見逃しや全話の一気見をしてもらえるドラマに再び光が当たったのです。
ネット上の見逃しサービスなら、視聴者毎にCMが差し替えられます。これで単価が数倍上がり、ライブ視聴での減少分をかなり補います。
さらに昨秋の『日本沈没』がNetflixで世界配信されたように、ドラマは海外市場に進出を始めました。場合によっては、ライブ視聴での広告収入と遜色ない売上となるようです。
長年テレビ局のKPIは視聴率でした。
ところが今や、ネットの広告収入や配信権料、さらに番組関連のグッズ売上などへと多様化しています。
瞬間風速の測定という単純な計算から、複数のチャンネルを使い時間をかけて価値の最大化を図る多元多次方程式を解く時代にテレビも突入しています。
ここまでインターネットは、ビジネスモデルを変えていたのです。