仕事柄クライアント企業のブランドや広告・コミュニケーションを考える際に、その企業の文化に触れることがちょくちょくあります。家庭、学校、NPO、官庁、およそ人が集まってできた組織にはそれぞれ文化があります。経営学においても昔から企業文化の研究がなされてきました。今回は企業における文化(Corporate Culture)とはどういう意味を少し考えてみたいと思います。
企業文化を理解するうえでまず一番誤解しやすいのは文化を個性(Personality)と混同してしまうことではないでしょうか。私たちはよくあの会社は「誠実」であるとか「やんちゃ」で「明るい」とか言いますが、これは文化ではありません。また、単なる方針(Policy)とも違います。もうひとつ抑えておきたいポイントは、文化には「よい文化、悪い文化」がないことです。たとえば、GEとグーグルは両方とも優良企業ですが文化は大きく異なります。企業文化とはそれぞれの企業が持つ独特の価値体系や行動規範のかたまりであって、外からマネをしようとしてもできませんし、マネをしても無駄です。企業文化の構成要素の要は「価値観」です。なぜならば価値観(Value)は目的(Vision)の達成に必要な行動様式や考え方の指針となるからです
では企業文化はいったいどこに現れてくるか、もちろん、企業の全ての慣行に反映されます。でもその中でもっとも重要なのが「会社における決定の為され方、すなわち意思決定のプライオリティ」です。「何を達成したいのか?その成果のためにどんな環境を作っていくか」をもとにして適切な意思決定がなされること、これが優れた企業の企業文化なのです。企業のことを知ろうとするとき、「この会社ではどのように決定がなされているか、いくつか具体的なシナリオを聞かせてください」と質問することが実は一番かもしれません。
最後に最近知ったブランドのこぼれ話をひとつご紹介したいと思います。高級革バックで有名なエルメス社、ラグジュアリーの権化なので、さぞブランド戦略やブランディングを意識しているのだろうと思い込んでいました。ところがエルメスの馬車のロゴマークが「エルメスは最高の品物を用意しますがそれを御するのはお客さまご自身です」を意味すると知ったとき、「これは違うぞ」と想った次第。
独自性と信憑性をもつ企業文化に社会や顧客や従業員が共鳴するとき、企業ブランドの価値は高まります。