コラム

【ELPASO会員コラム41-1】絵筆の志

2025年11月28日

事務局

2025.11.28
CRAFT54 宇井加美

50周年 おめでとうございます。
ELPASO会の会員様向けカレンダーを作成させていただいている宇井です。
エルパソ会には、橋本理事長からのお誘いで、「志」について皆さんと一緒に考えてみたいとの思いで参加させていただいています。

CDサイズカレンダーは独立した54歳から制作をはじめ、NPO会員や知人に活用してもらっています。カレンダーを制作するようになったのは34歳の時に手書きで野の花が中心の絵が始まりです。
NPO向けでは食品安全HACCPセミナーやコンサルタントを実施しているので、食材を中心に絵を制作した時期もあります。
水彩画は小学生から絵画教室にかよい何度か賞ももらいました、自信ができ高校卒業時に美大を受けたいと、教師に相談した時、お前の腕では美術教師になれるくらいの腕で、生活は苦しいぞとのこと機械工学の道へ進みました。
絵やデザインへのあこがれはあるのだから、「絵筆をすてずに描き続けろ」と恩師の声に、今でも続けています。
北海道生まれで、高校時代は菓子店や書店のロゴなどのコンペに応募しましたが日の目はみず。その頃北海道のお菓子店六花亭がふきのとうの絵をパッケージデザインに採用したホワイトチョコレートがヒットし始めました。
その絵を描いた坂本直行さんは十勝の開拓者で開墾しながら十勝の自然、野の花や北の植物をサインペンでその場でスケッチしていた画家で素朴で味のある絵です。帯広から札幌のアトリエに住まいを移し、山岳画家としてとても身近で影響をうけた画家です。明治生まれ、北海道開拓の原野の生活と絵は著書を読んでました。子供の頃から冬の雪を割って春、新芽がでてくる福寿草(まんさく)は私の生まれた札幌の庭でも体感として身近に残ってます。小さな原画は書斎に今でも飾ってます。
ボタニカルアートの先生から、植物を図鑑的に表現するより、素直にとらえ感じたままに表現した方が君には向いているとのアドバイスで、自分なりの目線で描き続けてます。

建設会社の設計部門に入社、図面はまだキャドのない時代、鉛筆や烏口で線を引いていたので、今でも絵筆を動かす手の筋力にはなっていると感じます。
先輩の図面チェックの時に線の表現から、悩みながら書いた線は、見抜かれました、図面は商品なのだから配管図でも美しくなくてはだめだ!と鍛えられました。チェックする立場になり手書きの図面では、ごまかした部分が明確にわかるようになりました。
人間の手書き線の表現力は深いものです。

企業の絵画部(エバラ画交会)に入り水彩から油彩も描くようになり、武者小路実篤らが設立した美術団体「大調和会」の会員にもなりました。銀座などで作品を年数回展示できるようにもなりました。
白い用紙に描き出し、設計者から絵画へ向かえたのも、白紙を目の前にして考え描きえがき、筆を離さない「志」が、絵の表現の力になっていることに、感謝してスケッチブックやキャンバスに向かっています。
目で見たものは手を通して描き上げることで脳の中できちんとした記憶になり色や前後の関係など心に残るから必ずスケッチはするように努めてます。
大きな夢を志とするのもよし、私のように手仕事としての志から想像しない作品が生まれてくる結果もあり、小さな「筆の志」を続けていくことで、花開いてきていると感じてます。

鎌倉二階堂にて 宇井加美

坂本直行の参考図書:
雪原の足あと(茗渓堂)、わたしの草と木の絵本(茗渓堂)、私の草本漫筆(茗渓堂) 原野から見た山(朋文堂)、山 原野 牧場(朋文堂)など



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