コラム
【ELPASO会員コラム40-1】ソーシャルアントレプレナーとして生き抜く力
2025年8月22日
事務局
2025.8.22
株式会社フェニクシー 代表取締役
橋寺由紀子
未来の社会を変えるのは、挑戦を続ける若き起業家たちです。
これから3カ月間、この欄を担当します。私は京都大学近くで居住滞在型ソーシャルインキュベータを運営し、社会課題に挑む若い研究者や起業家の活動を支えています。今回は、彼らの挑戦から見えてくる「生き抜く力」についてお話しします。
近年、日本でもSDGsやESGといった言葉が広まり、社会課題の解決を目指すソーシャルビジネスが注目を集めています。かつてはマネタイズが難しいとされた環境、農業、林業などの分野でも、若い世代による起業が増加しています。経済的利益だけでなく、地域社会や自然環境、生物多様性を守り、次世代に手渡したいという思いが彼らの原動力です。かつては「意識高い系」と揶揄された社会起業家も、今や社会変革のフロントランナーとして注目される存在になりました。日本政府も社会課題解決型スタートアップやインパクト投資への支援を強化し、追い風が吹いています。
そんな中で起業家として生き抜くために、私が大切だと考える3つのポイントをお伝えします。
1. 覚悟のための正しい知識を持つ
新しいビジネスに挑む起業家は、事業面だけでなく心理的・社会的な壁にも直面します。代表的なのは「インポスター症候群(自分は能力不足ではないかという不安)」や「ファミリープレッシャー(家族や友人からの反対)」。これらは自分だけに起きる特別な悩みではなく、多くの起業家が通る道だと知ることです。覚悟を支える知識があれば、心の持ち方や判断は大きく変わります。正しい知識は、迷いを整理し、次の一歩を踏み出すための力になります。
2. 耳の痛い意見をくれる仲間を持つ
ネットやSNSは便利ですが、同じ価値観の人ばかりが集まる「エコーチェンバー」に陥りがちです。自分のビジネスプランに「全能感を感じる」ときは注意が必要。異なる立場や考え方を持つ人の意見にこそ、事業を磨くヒントがあります。信頼できる、建設的なフィードバックをくれる人をぜひ大切にしてください。
3. 自分の決断に責任を持つ
研究テーマ、就職先、事業方針……人生にはいくつもの転機(Turning Point)が訪れます。そのたびに、自分で決め、自分の判断に責任を持ち続けること。それこそが自己効力感を育み、生き抜く力となります。
ソーシャルビジネスは、課題解決と自己成長が重なる挑戦です。
自らの決断を信じ、一歩を踏み出し、やり遂げる勇気を持ち続けてください。
皆さんの挑戦が、未来をより良い社会へと変えていくことを心から願っています。